おふたりさまの安心な未来のために

子どものいない夫婦が備えるべきこと

「夫婦ふたり、子どもなし」という”おふたりさま”の暮らしは、気ままで自由で心地よい反面、将来のことを考えると、ちょっと不安になることもあるかもしれません。特に、もしどちらか一方に先立たれたら…そのとき、残されたパートナーが困らないようにするためには、いくつかの大切な”備え”が必要です。

目次

  1. おふたりさまに必要な備えとは?
  2. 残されたパートナーを守るために─知っておきたい法定相続の仕組み
  3. 準備しておきたい5つの大切な書類
  4. 書類づくりの前に、まず「話し合い」を
  5. 専門家に相談するタイミングとは?
  6. 子どものいない夫婦の遺族年金
  7. おふたりさまの安心な未来のために

1. おふたりさまに必要な備えとは?

おふたりさまの場合、将来の相続や介護、医療の意思決定を誰が担うのかが非常に重要になります。特に子どもがいないご夫婦では、想定していなかった親族が突然「相続人」として登場することもあるため、早めの準備が欠かせません。

2. 残されたパートナーを守るために

知っておきたい法定相続の仕組み

「法定相続人」とは、民法で決められている相続人のことです。おふたりさまの場合、配偶者は必ず法定相続人になりますが、他にも”親”や”兄弟姉妹”が相続人になるケースがあります。これにより、配偶者だけでスムーズに相続手続きを進めることが難しくなるケースが多く見られます。

おふたりさまの法定相続人と法定相続分

相続人の構成配偶者の相続分親・兄弟姉妹の相続分
(1) 親がいる場合(直系尊属)3分の2親: 3分の1
(2) 親がいない/兄弟姉妹がいる場合4分の3兄弟姉妹:4分の1

※親も兄弟姉妹もいない場合は、配偶者が全てを相続します。

※親や兄弟姉妹が複数いる場合は頭数で等分します。

※親族と疎遠だった場合でも、法律上は相続権があります。

遺言がない場合のリスク

たとえ夫婦で一緒に築いた財産でも、遺言がないと法定相続分に従って分割されるため、配偶者が全てを受け取れない場合があります。残されたパートナーの住まいや生活が不安定になる可能性もあるのです。

よくあるトラブル例:

  • 配偶者だけでは手続きできない 預貯金の解約や不動産の名義変更に他の相続人(兄弟姉妹など)の同意が必要になる。
  • 生活費が引き出せない 疎遠な親族が相続人となることで、日常の生活費すら引き出せなくなるリスク。
  • 遺産の分割請求 兄弟姉妹から法定相続分の請求があり、対応を迫られる。
  • 自宅の売却リスク 相続分の支払いのために老後の住まいを手放すことにもなりかねません。
  • 精神的な葛藤 長年連れ添った配偶者としては、全財産を引き継ぎたいと思っても、それが叶わないことも。
  • 手続きの煩雑さ 他の相続人との遺産分割協議が必要となり、時間も労力もかかります。

3. 準備しておきたい5つの大切な書類

高齢期や万が一のときに備えて「どんな書類を準備しておけばよいのか」は、とても大切なテーマです。

ここでは、身体の変化・判断力の低下・終末期・相続・死後の事務といった場面ごとに、「今から備えておくと安心な書類」とそのポイントを整理してご紹介します。

📌 高齢期に備えるための書類一覧(早見表)

想定される場面主な準備書類主な目的
身体が不自由になったとき財産管理等委任契約書金融機関等での生活資金の出し入れの代行
判断能力が低下したとき任意後見契約書財産管理・身上監護の代行(介護・手続きなど)
終末期医療のとき終末期医療の要望書(尊厳死宣言書)延命措置等に関する希望を伝える
相続に備えるとき遺言書(公正証書)残された配偶者の生活を守るための相続指定
死後の事務手続き死後事務委任契約書葬儀・納骨・遺品整理などの手続きを委任

🧑‍🦼 身体が不自由になったときの備え

◆ 財産管理等委任契約書

「ATMに行けない」「金融機関の窓口での手続きが難しい」──そんな時に備えて、信頼できる方に財産管理をお願いできる書類です。

  • 何ができる? 預金の引き出し・振込・定期預金の解約・税金や公共料金の支払いなど。
  • おすすめポイント 口頭では対応できないことが多いため、「きちんとした書面」があることでスムーズに対応できます。

📎 関連ポイント:委任状が必要な金融機関の手続きは多い

➡ 契約書を事前に作っておけば、手続きも安心です。

🧠 判断能力が低下したときの備え

◆ 任意後見契約書(できれば公正証書で)

将来、認知症などで判断力が低下した場合に、あらかじめ選んだ「任意後見人」が財産管理や生活に関する手続きを支援してくれる契約です。

  • 家庭裁判所を通す成年後見制度との違いは? 👉 自分で「誰に任せるか」を決められる点が大きなメリットです。
比較項目任意後見契約成年後見制度(法定後見)
後見人の決定自分で選べる家庭裁判所が選任
開始のタイミング判断力が低下した後、家庭裁判所に届出判断力の低下後に開始
柔軟性高い(契約内容で詳細に決められる)制度上の枠組みで運用

🔍 注意点:財産管理等委任契約では、本人の判断能力がなくなると使えなくなるため、併せて任意後見契約の準備が望ましいです。

🩺 終末期の医療の希望を伝える

◆ 終末期医療の要望書(尊厳死宣言書)

もしものときに、ご自身がどのような医療を望むかを示しておくことで、病院やご家族(代理人)が適切に判断しやすくなります。

例:延命措置は望まない、苦痛の緩和を優先したい

  • 活用方法:入院時に病院へ提出、身近な人に保管場所を伝えておく

🕊️ ご自身の意思を尊重してもらうために、早めの準備をおすすめします。

🏠 相続に備える

◆ 遺言書(できれば公正証書遺言)

お子さまがいない場合、遺言書がないと配偶者以外の親族にも相続権が生じる可能性があります。

  • おすすめポイント 「お互いにすべての財産を相続させる」内容の遺言書を夫婦それぞれ作成することが非常に大切です。
遺言書に盛り込みたい内容ポイント
財産の承継先の指定配偶者にすべてを相続させる
遺言執行者の指定相続手続きがスムーズに
予備的遺言の設定後に残った配偶者の遺言が無効になった場合への備え

📎 公正証書遺言にすると、偽造リスクがなく、検認も不要でスムーズです。

⚱️ 葬儀や死後の手続きの備え

◆ 死後事務委任契約書(公正証書での作成推奨)

死後に必要となる様々な手続き──葬儀・納骨・遺品整理・施設の退去・契約の解約・ペットの世話などを信頼できる方にお願いしておくための契約書です。

  • こんな方におすすめです
    • 頼れる親族がいない方
    • パートナーに負担をかけたくない方
  • 費用面の工夫 → 遺言執行者と受任者を同一人物にすることで、死後の費用を遺産からまかなうことも可能です。
死後事務の主な内容委任可能な事務手続き
葬儀・納骨の手配火葬・埋葬先の指定など
遺品整理・退去手続き施設や病院の退去、解約手続き
デジタル遺品整理SNS・ネット口座の解約など
ペットの引き取り里親探しや譲渡

4. 書類づくりの前に、まず「話し合い」を

どんなに書類を整えても、「何も聞いてなかった」と残されたパートナーが戸惑ってしまっては意味がありません。

夫婦でしっかりと話し合い、お互いの希望を確認しておくことが、何よりも大切な”準備”です。

5. 専門家に相談するタイミングとは?

  • 相続について、どんな遺言書がいいのかわからない
  • 任意後見契約の手続きが難しそう
  • 親族との関係が複雑で心配

そんなときは、司法書士・行政書士・弁護士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。将来のトラブルを未然に防ぐためにも、早めのサポートが重要です。

6. 子どものいない夫婦の遺族年金──知っておきたい3つの制度

残されたパートナーの生活を支える「遺族年金」の知識は非常に重要です。子どものいない「おふたりさま」にとって特に関係の深い3つの制度について解説します。

📊 遺族年金3種類の比較表

種類対象者主な要件金額受給期間
遺族厚生年金厚生年金に加入していた方の配偶者など保険料納付要件あり亡くなった方の報酬比例部分原則として一生涯
寡婦年金国民年金第1号被保険者だった夫に生計を維持されていた妻夫の保険料納付期間10年以上、婚姻期間10年以上夫の老齢基礎年金相当額の4分の360歳から65歳まで
死亡一時金国民年金第1号被保険者だった方の遺族保険料納付済期間が36ヶ月以上12万円~32万円(保険料納付月数による)一回限りの給付

💰 遺族厚生年金──会社員だった方の配偶者を支える制度

遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者(会社員など)だった方が亡くなった場合に、その配偶者が受け取れる可能性のある年金です。

主な受給要件

  • 亡くなった方が厚生年金の被保険者であった
  • 一定の保険料納付要件を満たしている
  • 生計を維持されていた配偶者である

受給額と特徴

  • 年金額は亡くなった方の報酬額や加入期間に基づいて計算
  • 中高齢寡婦加算:40歳~65歳の子どものいない妻には、一定額が加算される重要な制度
  • 65歳以上では自身の老齢年金と調整されるが、多くの場合「どちらか高い方」が実質的に支給される

❗️ おふたりさまの注意点

遺族基礎年金は「子のある配偶者」が対象のため、子どものいない夫婦の場合、遺族厚生年金がより重要となります。自身の年金との併給調整にも注意が必要です。

👵 寡婦年金──自営業などの夫に先立たれた妻のための制度

寡婦年金は、国民年金第1号被保険者(自営業者など)だった夫が亡くなった場合に、妻が60歳から65歳までの間受け取れる制度です。

受給要件(すべてを満たす必要あり)

  • 夫が国民年金第1号被保険者として10年以上保険料を納付
  • 婚姻期間が10年以上継続
  • 夫に生計を維持されていた
  • 妻の年齢が60歳以上65歳未満

金額と特徴

  • 夫の老齢基礎年金相当額の4分の3
  • 65歳になると自分の老齢基礎年金に切り替わる
  • 妻が他の年金を受け取っている場合は選択になる
  • 寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方の選択になる

💴 死亡一時金──短期間で亡くなった場合の給付金

死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納付していた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給せずに亡くなった場合に支給される一時金です。

受給要件

  • 国民年金保険料納付済期間が36ヶ月以上
  • 遺族基礎年金の受給権者がいない

金額と特徴

  • 保険料納付月数に応じて、12万円から32万円の一時金
  • 付加保険料納付済期間が36ヶ月以上ある場合は、8,500円加算
  • 一回限りの給付であることに注意

📝 遺族年金を確実に受け取るための準備

  1. 年金記録の確認
    • 「ねんきんネット」や年金事務所で加入履歴を確認
    • 保険料納付状況も合わせて確認することが重要
  2. 必要書類の整理
    • 年金手帳や基礎年金番号通知書
    • 婚姻関係・生計維持を証明する書類
  3. 申請手続きの把握
    • 申請は原則として亡くなった日から5年以内
    • 申請が遅れると、遡って受け取れる期間が短くなる可能性

💡 パートナーごとの備えポイント

それぞれの就労状況によって受給できる遺族年金の種類が異なります。あなたのケースに当てはまる備えを確認しましょう。

夫婦ともに会社員の場合

  • 双方とも遺族厚生年金の受給対象となる可能性
  • 自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給調整に注意

夫が自営業、妻が専業主婦の場合

  • 寡婦年金と死亡一時金の受給要件を確認
  • 保険料納付状況の定期的な確認が重要

夫婦とも自営業の場合

  • 双方とも国民年金のみの加入となり、遺族厚生年金はない
  • 任意加入の国民年金基金などの検討も必要

遺族年金制度は複雑で、受給要件や金額計算に専門的な知識が必要です。「老後の収入の柱」となる年金について、自分たちの状況に合った「備え」を整えておくことをおすすめします。

7. おふたりさまの安心な未来のために🌸

法律面・年金面での適切な準備は欠かせません。

相続トラブルを防ぐ「遺言書」、判断能力低下に備える「任意後見契約書」、そして突然のことがあった場合でも残されたパートナーを支える「遺族年金」の知識。これらの”備え”は、パートナーへの最後の思いやりとも言えるかもしれません。

いざというときに慌てないよう、パートナーとゆっくりと将来について話し合って、「今」できる準備をしておくことが、安心できる未来につながります。

必要に応じて、ご相談をお待ちしております。あなたにとって「最適な備え」を一緒に考えていきましょう。